内部監査人は資格を取るべきでしょうか。
結論、内部監査人は資格があった方がベターです。
なぜなら監査人として結果を出すには、監査される側や周囲(ステークホルダー)に対して説得力を上げる必要があり、資格がそれに寄与するからです。つまり、資格で箔がつくということです。
もちろん箔をつけるのに「資格」が必須というわけではありません。「業務経験」「経歴」「役職」「特殊スキル」など、「資格」でない部分も箔をつける要素となります。
1つ言えることは、「資格」は名刺や署名に記載できるので、外に示すのが容易であるということです。相手が初対面の場合に特に役立ちます。
一方で、資格にはメリットばかりでなく、準備・試験・維持に時間とコストがかかるデメリットもあります。なので厳選すべきです。
本記事では、私の経験から内部監査人が取るべきおすすめ資格を紹介します。
グローバルメーカーでの内部監査やBIG4での内部監査アドバイザリーなど豊富な内部監査の経験に基づいています。
内部監査人が取るべき資格~基準~
下記の基準で資格を選びました。
- 資格取得にかかる時間とコストが妥当か
- 内部監査実務へどれだけ役に立つか
- 働きながら取れる資格か
内部監査人が取るべき資格【厳選】
- CIA(公認内部監査人)
- US-CPA(米国公認会計士)
- CFE(公認不正検査士)
内部監査人が取るべき資格:CIA(公認内部監査人)
公認内部監査人は、内部監査人協会(IIA)が定める国際的な認知度が高い内部監査資格です。
この資格の最大のメリットは、IIAの「専門職的実施の国際フレームワーク」(IPPF)をベースに、内部監査で直面する様々な事象を考え、整理できるようになることだと思っています。
試験合格以外で必要な要件は、大学卒であることと、倫理的に問題ない人であることを証明する他者からの推薦状を提出できることです。
合格まで必要な勉強時間は400時間程度と言われており、6カ月〜1年程度で取得は可能です。早い人では数か月で合格しています。もちろん働きながら可能です。
実務経験があり内部監査の国際基準をそれなりに知っている人であれば独学合格も可能です(ただし内部監査の経験が浅い人であれば、専門学校の体系的に整理された教科書で勉強する方が効率的です)。
コスト面・実務面を考慮して、今後内部監査領域でキャリアを描いている人にとっては最もおすすめの資格です。
一方デメリットとしては、内部監査以外への汎用性が(US-CPAと比較して)高くないことです。また、資格認定には2年の内部監査の実務経験が必要となる点も留意しておく必要があります。
- 内部監査について幅広く知識の習得が可能
- 「専門職的実施の国際フレームワーク」(IPPF)をベースに思考できるようになる
- 内部監査の資格として国際的な認知度が最も高い
- 半年程度で合格が可能、独学でも合格可能
- 内部監査以外への応用可能性(汎用性)は低い
- 資格認定には2年の実務経験が必要
内部監査人が取るべき資格:US-CPA(米国公認会計士)
US-CPAはその名のとおり米国の公認会計士の資格です。
試験は米国全土で統一されており、受験要件・ライセンス要件は州によって異なります。日本人がライセンスを取得するには、現行ではワシントン州かグアム(準州)の2択になるかと思います。
内部監査の仕事をしていると「会計士」という資格は一目置かれます。グローバルな環境で仕事をしている場合には特にそうです。
CIAと違い、内部監査以外の領域でも広く知られている資格であり、財務・経理部門へのキャリアを描いている人も多く取得しています。
US-CPAは、日本の公認会計士ほど専門知識は不要で、比較的容易に合格が可能です。もちろん皆、働きながら取得しています。ただし、完全独学は効率性の観点から適切でないと思います。
デメリットは、単位取得・出願・試験代・専門学校の費用などを考慮するとそれなりにコストがかかること(100万円以上)です。また、2〜3年の期間が必要です。私の場合は専門学校選びに失敗し、6.5年で190万円を費やしてしまいました。
- 米国の会計士の資格で、試験は米国全土で統一
- 受験要件・ライセンス要件は州ごとに異なる
- ライセンス取得を日本人が目指す場合の候補州はワシントン州かグアム(準州)
- 試験は①財務会計②税務・法務③監査④ビジネス全般の4科目
- 取得までの期間は、受験要件を満たす期間を考慮すると最低2〜3年は必要
- US-CPAの専門学校に通う必要がある
- 資格取得の総コストは100万円以上かかる
- 内部監査だけでなく、経理・財務・企画など様々な分野でのポテンシャルがある
費用対効果という観点から、内部監査でキャリアを積むと決めている人であればCIA(+CFE)、内部監査だけでなく経理・財務・企画など汎用性の高いキャリアを考えている人にはUS-CPAがおすすめです。

内部監査人が取るべき資格:CFE(公認不正検査士)
CFE(公認不正検査士)は、米国に本部があるACFE(公認不正検査士協会)が認定している不正の専門家の国際的な資格です。難易度は中程度です。
内部監査の世界にいると、CIA+CFEの取得者が結構な割合でいます。その理由は、CIAが内部統制をテーマにしているのに対して、CFEは不正に特化した勉強をするので、その内部統制と不正の組み合わせが監査人に必要なスキルにマッチしているためです。
不正はいろいろなところで起こっています。大企業の不祥事(粉飾決算、社長や従業員の横領など)が頻繁にニュースで報道されていますね。
内部監査は不正調査をする部門ではありませんが、不正に関するリスクとその対応が適切にできているかを評価したり、時に不正の兆候を見つければそれをマネジメントに伝え、問題が大きくなる前に未然に対処する、というような役割が求められています。
よって「CIAで内部統制・内部監査の全般を学び、CFEで不正領域を深める」という方法が、いまの内部監査市場のニーズに合っています。
デメリットとしては、ACFEという協会の会員であることが受験の要件となっており、個人で入るには受験前から年2万円以上の費用が発生することです。
- 不正に特化した知識習得が可能
- 難易度は中程度
- CIA+CFEで、企業不祥事が絶えない時代に求められる知見の取得が可能
- ACFEの会員になっていることが要件
ランク外とした内部監査関連の資格
公認会計士(日本)
日本の公認会計士を取得するには最低4000時間の勉強が必要と言われており、働きながら取得するのは難しいのでランク外としました。もちろん、内部監査人として公認会計士(日本)は強い武器になります。

CISA(公認情報システム監査人)
情報システムに特化しているので除外しました。情報システム・セキュリティ監査人を目指すのであればおすすめの資格です。
情報システム・IT監査ができる人材は足りておらず、内部監査の人材市場では引っ張りだこです。
一方で、資格認定されるのは5年の実務経験という条件もあり、時間がかかることは念頭に置いておいた方がよいでしょう。
内部監査士
内部監査士は、日本内部監査協会が主催する内部監査士認定講習会を修了した方に与えられる資格です。
50時間の研修を受けて論文を書くと取得可能です。デメリットは、集合研修に参加しなければいけないので、時間の融通がききにくい点です。国際的な知名度を意識するのであればCIAの方を取るべきかと思います。
ただし、内部監査士の研修内容自体はとても面白いようです。所属している企業が時間とお金を投資してくれるのであれば、受けて取得してみるのは良いと思います。
まとめ~資格はあくまで手段。戦略を定めよう~
ここまで資格のことを書いてきましたが、資格はあくまで手段(補助)です。
私はこれまで、簿記、ビジネス実務法務、中小企業診断士、米国公認会計士など、いろいろな資格にチャレンジしてきました。
「結構、無駄だったかな」と感じている部分もあります。理由は、資格を取ったからといって仕事ができるようになる・稼げるようになるわけではないからです。仕事ができるようになるには、実務を積み重ねるしかありません。
一方で、資格が役に立ったと思った場面は、初対面の人や、これまで自分と一緒に仕事をしたことがない人と関わったときです。初対面ではわりと資格は見られます。ただ、一緒に仕事を始めてしまえば、資格は関係ありません。「自発的に思考してアウトプットし、改善しているか。またコミュニケーションを気持ちよく取ってくれるか」——このような要素の方が、資格よりも何よりも重要です。資格だけあっても意味がありません。
追加で考慮すべき点は、資格は取得するだけでも大変ですが、その資格を維持するのもさらに結構大変ということです。資格の維持にかかるコスト・時間も事前に熟慮しておいた方がよいでしょう。
それでもなお資格取得を志す方は、以下のような目的意識で臨むのがおすすめです。
知識を体系的に整理する
資格勉強の利点は、知識の体系化です。実務だけだと、やはり知識が偏ってきます。資格の勉強は体系的に行うので、偏った知識や不足する知識をうまく補ってくれます。良質な専門学校のテキストの網羅性とわかりやすさは、やはり圧倒的です。
異職種への異動や転職のPRとして活用する
これまで内部監査未経験で、ぜひキャリアチェンジしたい方におすすめなのは、「US-CPAやCIAを勉強し、科目合格し、見える成果を出すことで、異動や転職活動を実現する」という方法です。
自分の幅や知識を広げようとする行動に説得力が生まれ、結果として職種転換や異なる職種への転職につながる可能性が上がるはずです。私も10年以上営業をやってからUS-CPAを勉強し、内部監査のキャリアへ転身した経験があります。
資格に過度の期待をしすぎず、メリット・デメリットを見ながら戦略的に活用してみてください。
今回は以上です。
