内部監査の担当にアサインされたんだけど、個別監査ってどうやって計画を立て、実施し、報告すればいいの?
こんな疑問にお答えします。
内部監査とは【わかりやすく徹底解説】では、内部監査とは何か、内部監査のプロセス(組織運営・個別監査)の全体像を紹介しました。
実務上は、内部監査部門に勤務するとまず、個別監査にアサインされることがほとんどのため、本記事では個別監査のやり方やプロセスを深堀りしてご紹介します。
- 内部監査の計画
- 内部監査の実施
- 内部監査の報告
グローバルメーカーでの内部監査やBIG4での内部監査アドバイザリーなど豊富な内部監査の経験に基づいています。
内部監査計画
個別の内部監査計画では、年度計画で選定された個別監査毎に「いつ、誰が、何を、どのようにみるのか」を定めていきます。スコーピングともいいます。
具体的には下記のような項目を定めます。
- 被監査組織・テーマのリスクに基づく監査目的の設定
- 概略スケジュールの策定
- リソースと役割分担の決定
順に解説します。
被監査組織・テーマのリスクに基づく監査目的の設定
被監査会社・組織の状況、リスクを踏まえ、今回の個別監査で実施すべきこと(監査目的や重点監査項目)を定めます。
リスク評価の方法は【徹底解説】内部監査のリスク評価とはをご参照下さい。
監査目的の例
- 会計不正が発生した拠点であれば「会計不正が起きない体制が整備されているかを確かめる」
- 品質問題が過去に発生した拠点であれば「品質問題を再発防止策が有効に機能しているかを確かめる」
重点監査項目の例
- 決算人員・体制
- 経理規程・マニュアルの整備状況
- 経理上の職務分離の状況
- 品質保証組織・体制
- 品質保証教育の実施状況
- 新規検査基準の理解度
個別監査のリードは、被監査組織のリスクに応じて、監査範囲を定めていきます。
概略スケジュール
監査計画から監査報告までの概略スケジュールを定めます。
以下のようなガントチャートを作ってスケジュールを作ったりすることが多いです。
リソースと役割分担
下記のようにリソースと役割分担を大まかに定めます。
上記のような監査目標、リスク、重点監査項目、スケジュール、役割分担などを「個別監査計画書」としてまとめるような会社もあります。
内部監査の実施
策定した監査計画に基づいて、監査を実施していきます。ここでは主に以下のようなプロセスがあります。
- 監査プログラム作成
- 往査準備
- 往査実施
順に解説します。
監査プログラムの作成
監査項目に応じて、監査プログラムを作成します。「監査手続書」とも呼ばれます。
- 監査の視点
- 想定されるリスク
- 実施する監査手続き
- 関連資料
往査準備
作成した監査手続きを実施するために、以下のようなことを実施します。
- 事前資料依頼
- チーム内の往査の役割分担の決定
- 実査スケジュールを作成
事前に資料閲覧や分析をし、どんなことが問題となりそうか(発見事項の仮説)を事前に検討していくとより充実した往査になります!
往査実施
次はいよいよ現場往査です。
往査では主に下記を実施します。
- 監査手続きの実施
- 監査調書の作成
- 監査発見事項の作成
- 質問(インタビューで聞く)
- 閲覧(関連文書を見て確かめる)
- 照合(文書、データ等を突き合わせて整合しているかを確かめる)
- 観察(現場で実際にやっているところを見る)
- 再実施(必要に応じて自ら再実施したりをします。)
上記の手続きの組み合わせで監査を実施します。
監査結果は監査調書へ文書化します。監査調書作成時は以下のようなことに留意します。
- 正確に記載されているか(正確性)
- 誰がみてもわかるか(客観性)
- 簡潔にわかりやすく記載されているか(簡潔性・明瞭性)
- 体系的に記載されているか、抜け・もれなく記載されているか(完全性)
- 根拠が十分に記載されているか(発見事項にするか否かの判断根拠が十分にあるか)
そして監査の結論に基づき、発見事項を作成します。
ここは監査の結論となるので最重要ポイントです。
- 発見事項(現状とあるべき姿の差)
- リスク(問題を放置しておくと会社にとってどのような影響があるか)
- 改善提案(原因を踏まえた改善提案)
発見事項の事実確認を実査時に終わらせること、可能であれば改善事項(措置内容)・改善期限まで被監査部門と合意までもっていけるのがベストです。
内部監査報告
実査後は監査報告書を作成します。
報告書ドラフト前に下記を被監査組織と合意しておきましょう。
- 発見事項の内容
- 改善施策(措置内容)
- 改善スケジュール
監査報告書には以下のような内容を含めるのが一般的です。
- 監査の概要(スケジュール、被監査組織、監査メンバーなど)
- 監査の目的
- 監査のスコープ
- 監査の結論(発見事項の概要)
- 発見事項の内容(現状とあるべき姿の差)
- リスク(発見事項を放置しておくとどのような影響があるか)
- 問題の原因(プロセス、ガバナンス、人、組織等様々な切り口からみて根本原因)
- 改善提案(根本原因を捉えた改善提案)
- 措置内容(被監査部門として実施する措置内容)
- 実施期限(その措置をいつまでに実施するか)
上記をドラフトし、内部監査部門長、内部監査の品質管理担当などからレビューを受けます。
監査報告書は、事実の「正確性」「客観性」が大事です。でも発行が遅くなりすぎるとステークホルダーにとって、古新聞の情報になってしまう可能性もあります。「迅速性」「適時性」のバランスが大切です
監査報告書発行後は各発見事項のフォローアップのプロセスに入っていきます。
まとめ
概ね上記のような感じで個別監査は進んでいきます。
個人的には個別監査の計画~報告では以下の3つが特に大事だと思っています。
- 事前の計画段階でリスクに焦点を当てられるか
- 実査でどこまで問題点を深堀り(表面的な事象だけでなく、それを引き起こしている要因)ができるか
- 監査報告書の文章品質(客観的かつ論理的なライティング力)をどこまで上げられるか
会社ごとに詳細なプロセスは異なるので、自社のルール(内部監査マニュアル)などをチェックして個別監査に挑んでみて下さい。
今回は以上です。